障害年金の診断書には、傷病の部位・種類に応じて8種類の様式があります。どの様式で請求するかによって審査のポイントが変わるため、傷病ごとの特性を押さえることが重要です。

精神の障害

障害年金の請求で最も件数が多い分野です。使用するのは「精神の障害用」の診断書(様式第120号の4)です。

主な対象傷病

  • 気分(感情)障害:うつ病、双極性障害(躁うつ病)、持続性気分障害
  • 統合失調症・統合失調症型障害・妄想性障害
  • 発達障害:自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害
  • 知的障害(精神遅滞)
  • 器質性精神障害:高次脳機能障害、認知症、アルコール性精神障害、てんかん性精神障害
  • その他:てんかん、症状性を含む器質性精神障害
対象外となる傷病に注意:神経症(パニック障害、適応障害、不安障害、PTSD、身体表現性障害など)は、原則として障害年金の対象になりません。ただし、その症状が精神病の病態を示している場合は、統合失調症や気分障害に準じて認定されることがあります。診断名だけであきらめる必要はありません。

申請のポイント

  • 「日常生活能力の判定」7項目と「日常生活能力の程度」が等級判断の中心になります(詳細は障害等級のページ
  • 単身生活を想定した状態で評価されるため、家族の援助で成り立っている部分を明確に伝える必要があります
  • 就労している場合は、勤務形態・受けている配慮・欠勤の頻度・体調による業務制限を具体的に記載します
  • 発達障害・知的障害は、初診日が20歳前になるケースが多く、納付要件が不要になる場合があります
  • 知的障害を伴わない発達障害では、初診日の特定が争点になりやすいです

肢体・脊椎の障害

主な対象傷病

  • 人工関節・人工骨頭の置換:変形性股関節症、大腿骨頭壊死、関節リウマチなど
  • 脳血管疾患の後遺症:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血による麻痺・機能障害
  • 脊髄・脊椎疾患:脊髄損傷、脊髄小脳変性症、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症
  • 四肢の切断・欠損、機能障害
  • 神経・筋疾患:筋ジストロフィー、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、パーキンソン病、多発性硬化症
  • 関節リウマチ、線維筋痛症

申請のポイント

  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換した場合、置換した日が障害認定日になります(1年6か月を待つ必要がありません)。原則3級相当ですが、術後も著しい機能障害が残る場合は上位等級もあり得ます
  • 脳血管疾患は、初診日から6か月経過後に症状固定と医学的に認められれば、1年6か月を待たずに認定日が設定されます
  • 診断書には関節可動域(ROM)、筋力、日常動作の可否(片足で立つ、階段を上る、箸を使う等)が記載されます。測定時の状態が実態と合っているかの確認が重要です
  • 上肢・下肢・体幹の複数箇所に障害がある場合は、併合認定で等級が上がる可能性があります

循環器・呼吸器の障害

主な対象傷病

  • 心疾患:心筋梗塞、狭心症、心筋症、弁膜症、重症心不全、大動脈解離、先天性心疾患
  • 医療機器の装着:心臓ペースメーカー、ICD(植込み型除細動器)、CRT、人工弁置換、人工血管、補助人工心臓
  • 呼吸器疾患:COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺線維症、間質性肺炎、気管支喘息、肺結核後遺症、じん肺
  • 在宅酸素療法(HOT)を実施中の方

申請のポイント

  • ペースメーカー・ICD・人工弁を装着した場合、装着日が障害認定日です。原則3級相当ですが、CRTやICDは2級に該当することもあります
  • 在宅酸素療法を開始した日が障害認定日になります
  • 心疾患では、NYHA分類・EF(左室駆出率)・BNP値・運動耐容能などの検査数値が重視されます
  • 呼吸器疾患では、動脈血ガス分析(PaO2・PaCO2)、予測肺活量1秒率などの数値が判断材料になります
  • 数値が基準に届かない場合でも、日常生活の制限(入浴で息切れする、平地でも休憩が必要など)を具体的に示すことが重要です

腎疾患・肝疾患・糖尿病

主な対象傷病

  • 腎疾患:慢性腎不全、人工透析(血液透析・腹膜透析)、腎移植、IgA腎症、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症
  • 肝疾患:肝硬変、慢性肝炎(B型・C型)、肝がん、アルコール性肝障害
  • 糖尿病とその合併症:糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害

申請のポイント

  • 人工透析を開始した場合、透析開始から3か月経過した日が障害認定日となり、原則2級に認定されます。障害基礎年金でも受給できる代表的なケースです
  • 糖尿病そのものよりも、合併症の状態で等級が決まることが多くあります。合併症は「糖尿病を初診日とする」ため、初診日が古くなる点に注意が必要です
  • 肝疾患では、Child-Pugh分類・検査数値(アルブミン、ビリルビン、プロトロンビン時間)と、それによる日常生活の制限が判断材料です
  • 糖尿病で血糖のコントロールが困難(1型で頻回のインスリン注射が必要など)な場合、3級相当と認定されることがあります

がん・血液疾患

主な対象傷病

  • 悪性新生物(がん):肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など
  • 術後の状態:人工肛門(ストーマ)、人工膀胱、喉頭全摘出、胃全摘、肺切除
  • 血液・造血器疾患:再生不良性貧血、骨髄線維症、血友病

申請のポイント

  • がんは「悪性新生物による障害」として、全身の衰弱・機能障害・治療の副作用による日常生活の制限で判断されます。ステージだけで決まるわけではありません
  • 人工肛門・新膀胱を造設した場合、造設から6か月経過した日が障害認定日です。喉頭全摘出は全摘出した日が認定日です
  • 抗がん剤治療の副作用(強い疲労感、末梢神経障害、悪心・食欲不振など)による生活の制限を具体的に書くことが重要です
  • がんの部位により、使用する診断書の様式が異なります(呼吸器・消化器・血液・その他)

目・耳・言語・そしゃくの障害

主な対象傷病

  • 眼の障害:視力障害、視野障害、網膜色素変性症、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢性マキュラ変性、ぶどう膜炎
  • 聴覚の障害:感音難聴、伝音難聴、突発性難聴の後遺症、人工内耳装用、メニエール病
  • 平衡機能障害
  • 音声・言語機能の障害:喉頭全摘出後の失声、構音障害、失語症
  • そしゃく・嚥下機能の障害

申請のポイント

  • 眼・耳の障害は、視力・視野・聴力レベル(dB)といった客観的な数値で等級がほぼ決まるため、検査結果の正確な記載が重要です
  • 視野障害は、令和4年の基準改正により認定範囲が広がりました。以前に不支給だった方も再検討の余地があります
  • 両耳の平均聴力レベルが100dB以上で1級、90dB以上で2級が目安です
  • 人工内耳を装用している場合も、装用前の聴力で判断されます

難病・その他の疾患

主な対象傷病

  • 消化器系:潰瘍性大腸炎、クローン病、短腸症候群
  • 膠原病・自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、血管炎
  • 疼痛性疾患:線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群(CRPS)
  • その他:慢性疲労症候群、化学物質過敏症、脊髄空洞症、指定難病全般
  • HIV感染症

申請のポイント

  • 認定基準に明確な数値が定められていない傷病は、「その他の疾患による障害」として、日常生活の制限の程度で判断されます
  • 疼痛は原則として認定の対象になりにくいものの、他覚的所見があり日常生活が著しく制限される場合は認定され得ます
  • 診断書の「現症時の日常生活活動能力および労働能力」「予後」の欄の記載が特に重要になります
  • 症状に波がある疾患は、良いときだけの状態で診断書が書かれないように配慮が必要です
ここに載っていない傷病でもご相談ください。

障害年金は病名ではなく「支障の程度」で判断される制度です。複数の傷病を併せ持つ場合も含め、まずは現在の状況をお聞かせください。ご相談・お見積りは無料です。