障害年金は、病気やケガが原因で生活や仕事に一定以上の制限が生じたときに、国から支給される公的年金です。老後に受け取る老齢年金と同じ公的年金制度の一部であり、現役世代でも受け取ることができます。65歳前の若い方や、働きながら治療を続けている方も対象になり得ます。
障害年金の基本的な考え方
障害年金は「働けないほど重い障害がある人だけの制度」と思われがちですが、実際には日常生活や労働にどれだけの制限があるかを基準に、1級・2級・3級(3級は障害厚生年金のみ)という等級で判断されます。
また、障害年金は原則としてご自身から請求(申請)しないと支給されません。要件を満たしていても、請求しないまま何年も経ってしまうケースは非常に多くあります。遡って受け取れるのは原則5年分までのため、「もらえるかもしれない」と感じた時点で確認することが大切です。
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
障害年金には2つの種類があり、「初診日にどの年金制度に加入していたか」によって、どちらで請求できるかが決まります。
| 項目 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
|---|---|---|
| 初診日の加入制度 | 国民年金(自営業・学生・専業主婦・無職・20歳前など) | 厚生年金(会社員・公務員として勤務中) |
| 対象となる等級 | 1級・2級 | 1級・2級・3級(+障害手当金) |
| 年金額の決まり方 | 等級ごとの定額 | 加入期間・平均標準報酬額に応じて計算(+1・2級は障害基礎年金も併給) |
| 加算 | 18歳到達年度末までの子(障害のある子は20歳未満) | 1・2級は配偶者加給年金/子の加算は障害基礎年金側で |
| 特徴 | 3級がないため、2級に届かないと不支給になる | 3級・障害手当金があり、比較的軽い障害でも対象になり得る |
※会社員時代に発症した傷病であっても、初診日が退職後(国民年金加入中)であれば障害基礎年金での請求になります。初診日の認定は結果を大きく左右します。
障害者手帳との関係
よくある誤解が「障害者手帳を持っていないと障害年金はもらえない」というものです。実際には、障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳)と障害年金は別の制度で、認定を行う機関も基準も異なります。
- 手帳を持っていなくても、障害年金を受給できる場合がある
- 手帳が3級でも、障害年金は2級と認定される場合がある(逆のケースもある)
- 手帳の申請と障害年金の請求は、別々に手続きが必要
「手帳がないから対象外だ」と自己判断せず、まずは受給要件の確認から始めましょう。
すべての起点となる「初診日」
障害年金の手続きで最も重要なのが初診日です。初診日とは、障害の原因となった傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。
初診日によって、次のすべてが決まります。
- 障害基礎年金か障害厚生年金か(=受け取れる金額と等級の範囲)
- 保険料の納付要件を満たしているかの判定時点
- 障害認定日(原則、初診日から1年6か月経過した日)
注意したいのは、「その傷病で最初にかかった科」が必ずしも現在の主治医とは限らない点です。たとえば、うつ病で心療内科に通う前に、体調不良で内科を受診していた場合、その内科の受診日が初診日と認定されることもあります。
請求方法の3つのパターン
障害年金の請求には、いつの時点の障害状態で審査を受けるかによって、いくつかのパターンがあります。どれを選ぶかで受け取れる金額(特に過去分)が大きく変わります。
① 障害認定日請求(本来請求)
障害認定日(原則、初診日から1年6か月後)から1年以内に請求する方法です。認定日時点の診断書で審査され、認定日の翌月分から年金が支給されます。
② 遡及請求(そきゅうせいきゅう)
障害認定日から1年以上経ってから請求する場合に、認定日当時の診断書と現在の診断書の2通を提出し、過去分をまとめて受け取る方法です。時効により受け取れるのは請求日から遡って5年分までですが、まとまった額(数百万円になることも)を受け取れる可能性があります。
③ 事後重症請求
障害認定日の時点では等級に該当しなかったものの、その後に症状が悪化して等級に該当するようになった場合の請求です。この場合、請求した月の翌月分から支給が始まり、過去分は受け取れません。つまり、請求が遅れるほど損をします。
請求に必要な主な書類
| 書類名 | 内容と入手先 |
|---|---|
| 年金請求書 | 年金事務所または市区町村の窓口で入手。基礎年金・厚生年金で様式が異なります。 |
| 受診状況等証明書 | 初診日を証明する書類。初診の医療機関に作成を依頼します。 |
| 診断書 | 障害の状態を医師が記載。傷病の部位ごとに8種類の様式があります。 |
| 病歴・就労状況等申立書 | ご本人(またはご家族)が発病から現在までの経過・生活状況を記載する唯一の書類。最も工夫が必要です。 |
| 年金手帳・基礎年金番号通知書 | 基礎年金番号の確認用。 |
| 戸籍・住民票など | 加算対象の配偶者・子がいる場合に必要です。 |
| 受取先金融機関の証明 | 通帳の写しなど。 |
このうち、病歴・就労状況等申立書はご本人側が自由に記述できる唯一の書類です。日常生活での具体的な困りごと(服薬管理、金銭管理、対人関係、通院の付き添いの有無など)を、診断書の内容と矛盾なく、かつ具体的に伝えられるかが結果を左右します。
よくある誤解と注意点
- 「働いているともらえない」→ 誤りです。特に障害厚生年金3級や、内部疾患・肢体の障害では、就労しながら受給している方が多くいます。ただし精神の障害では就労状況が判断に影響しやすいため、勤務内容や受けている配慮を正確に伝える必要があります。
- 「一度不支給になったら終わり」→ 誤りです。審査請求・再審査請求のほか、期間を置いて事後重症請求として再度チャレンジする道もあります。
- 「年金を払っていなかったから無理」→ 一概には言えません。20歳前に初診日がある場合は納付要件が不要です。また免除申請をしていた期間は納付済み扱いになることもあります。
- 「窓口で無理と言われた」→ 窓口での説明は一般的な案内にとどまることがあります。請求方法や初診日の考え方を変えることで、道が開けるケースもあります。